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価値・搾取・成長 森嶋通夫著作集 (8)価値・搾取・成長 森嶋通夫著作集 (8)
(2004/07)
森嶋 通夫

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 金庸小説の後期、「倚天屠龍記」あたりから、特に「天龍八部」と「笑傲江湖」は如何にも「リアリティ」のない「武功」が数多くでてきます。 面白さを追求しただけかもしれませんが、その「メタファー」というか、この教科書でいう言葉のアイロニー」(表面上述べられていることとは違う意味を読み取らせようという修辞的表現。 隠喩(メタファー)や直喩など他の修辞技法とは異なり、解釈という行為をとおして認識される。)として読んでみます。 以前、「独狐九剣」の誕生完成、そして令狐冲の習得でも書きましたが、金庸の武功からは色々な意味が読み取れて又楽しからずや、です。

 摩訶不思議な武功『吸星大法』は「天龍八部」の段誉が図らずも伝授されてしまった「逍遥派」の武功から続いていますが、これについて云々してみたいと想います。
 「笑傲江湖」は「政治」についてのお話だということは「あとがき」で金庸自身が自己解題していますが、そう読んでいくと、前記の『独狐九剣』が大げさにいえば『弁証法』の基礎知識です。 そして『吸星大法』は上記の本の題名の通り、マルクス経済学の言う資本主義の『搾取』を喩えたものです。 というか資本主義そのものです。
 令狐冲が梅荘の地下牢で読む任我行の彫った要訣の最初は、「丹田、常に空箱」とあり「気を散らせ」としています。 旧来の内功の修行法の原則である「丹田に集める」と逆なのですが、これは「集める=皇帝を頂点とした封建制」、を「空箱・散らす=個人の自由を前提とした近代市民社会に変革」させること。 「気を六脈に廻らせる=資本を循環させる」。 そして、相手の内力を吸い取り、自らの内力を強くする=『搾取』により「成長」(資本蓄積拡大再生産)するということのようです。 「たまに暴れる=景気変動。 そして「他人から吸い取った内力が暴れる」「多いほど反発力が強くなる」=階級対立が進むということになるのでしょう。
 任我行は「その解決策を発見・習得した」と自負しました。 この解決策は令狐冲が伝授を断ったため具体的に出て来ませんが、彼の性格や行動からすると、「帝国主義」といっていいのではないでしょうか。

 『吸星大法』をアホらしいほど「偶然に」取得することは、以前令狐冲を「衰退しつつあった中華なるもの」と翻訳しましたが、歴史観とかではなく、結果的に辿らざるを得なかった歴史として喩えているようです。

 物語が進むと、「辟邪剣譜」と「葵花法典」は原本が同じであることが明かされます。 根は同じものを対立する正派と邪派ともに「最高の武功」とする皮肉。 まるで、マルクスレーニン主義といいながら、対立の為の理論と武闘を展開した「ソ連」と「中華人民共和国」のように。 そして、その教条が理想の思想のように見えても結局「人間性を否定」し「不幸にする」ものであって、それを承知のうえ権力欲ゆえ「奪い合い」「習得し」「滅んでいく」こと、そういった姿への無常感さえ感じる諷刺・警句を痛感します。

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