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批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)
(2005/03)
廣野 由美子

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 笑傲江湖の小説の書き方=技法について、これをガイドブックに短期集中講座を受講したつもりで一気に練習してみます。

本書によれば小説の技法には16のポイント=面白さの仕掛けがあるとのことです。
1)冒頭  2)ストーリーとプロット  3)語り手  4)焦点化  5)提示と叙述  6)時間  7)性格描写  8)アイロニー  9)声  10)イメジャリー  11)反復  12)異化  13)間テクスト性  14)メタフィクション  15)結末

 一時限目は1)から5)までやってみます。 以降は何時限かに分け最後に「まとめ」。 ネタばれ多数ですので念のため・・・。
受講ノート・レジュメですのでご容赦の程・・・・・

1.小説の読み方は二つの切り口がある。

1)中に入っていく:形式・技法・構造・言語等技法の研究・・・内在的アプローチ・形式主義
2)外へ出て行く:文学以外の対象や理念を探求するためにテクストを利用する・・・外在的アプローチ・批評理論

2.「小説技法」について16のポイント(内在的アプローチ)

1)冒頭
イ)言葉の定義
  小説の書き出し。読者を小説の世界に引き込む入り口。
ロ)本作では
 a)季節・風景の描写、場所のみの記述。 時代設定は記していない。 詩や詞、前書きも特に無く力の抜けた軽い入り方。
 b)書き出しというよりプロットとして福威ひょう局の滅門から入ったところが小説全体の構成上秀越。


2)ストーリーとプロット
イ)言葉の定義
 a)ストーリー(物語):出来事を時系列に並べたもの。 年表。
 b)プロット(構成):出来事が小説に書かれる順番。

 c)本作のプロット: ・ストーリーの順:A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K  ・プロットの順:E,F,A,G,C,H,B,I,J,D,K 近代以降の長編小説はこの形多し。 出来事の因果関係をはっきり出来る。 推理小説など謎解きネタあかしでは必須。
 d)三国志などのプロット:ほぼストーリーの順A、B・・・・・J,K 古典はこの場合が多い。 ・笑傲江湖的にすると、赤壁の戦いから始まり、曹操の逃亡時に関羽が見逃す際に「単騎千里行」を因果として出すようなもの。
ロ)本作では
 a)画期的・独自なものではないが、これだけプロットを工夫したのは、射ちょう三部までは少ない。 倚天屠龍記は、あの三世代にわたる長く雄大な物語を、プロットを工夫すればより面白くなったと思う。 天龍八部は4人のストーリーを組み合わせようとしてうまくいっていないようです。(侠客行・連城訣は未読です)。
 b)プロットの工夫により、サスペンス・ミステリー感を出している。 なぜこんな事が起こるのか、のネタあかしが後々語られる場面と、こうなったら次はどうなるのか、という期待が沸くような場面が、使い分けられている。


3)語り手
イ)言葉の定義
 a)語り手:小説を語って話を進行させているのは誰か?
 b)一人称:誰であれ物語世界の中に属する人・・・読者は一人称の語り手の語りを読む形となる。
 c)三人称:小説世界の外の人が語る=登場人物を三人称で語る。全知の語り手(ほぼ=)作者となる。
 d)枠物語(劇中劇):物語の中にさらに物語を埋め込む形
 e)信頼できない語り手:一人称の語りの場合、その語り手の言葉が「信用できない」場合がある。 嘘をつく、事実を選択して語る、主観をまじえる、など。 読者がその語り手をどう感じその話をどう判断するかによる。 一方三人称の説明的部分は、信頼する前提で読まないといけないが、けっこう危うい。
ロ)本作では
 a)プロット上過去の出来事を語ったり、江湖の評判を語る際一人称が多く使われる。 前者は、儀琳の救難・座闘の報告場面。僻邪剣法と葵花法典の由来を方証大師と沖虚道長が語る場面。 後者は衛山の劉正風引退式の際の莫大先生と不仲の噂。莫大先生が少林寺に軟禁された盈盈の状況を令狐冲に語る場面、など。
 b)各語り手が読者に「信頼できない語り手」として認識されると、語られた内容が「事実?、真実?、真意は?」という「疑問」「錯誤」「混乱」を生む。 策略・陰謀・思惑・愛憎が積み重なると「信頼できる語り手」がいなくなる。
 c)枠物語としては「儀琳親子」の逸話がそれにあたると思われる。


4)焦点化
イ)言葉の定義
 a)従来の「視点」:語り手の立っている位置だが、誰が語っているか?と、誰が見ているか?は実は別物。 以下で更に明確にする。
 b)焦点人物:見ている主体。見るは視覚だけではなく五感と認識を含む。
 c)外的焦点化:焦点人物が物語世界の外にいる。 三人称つまり全知の語り手(ほぼ=)作者が語っても物語の外にいるわけではない。
 d)内的焦点化:焦点人物が物語世界の中にいる
 e)固定内的焦点化:焦点人物が固定されている。
 f)不定内的焦点化:焦点人物が変わっていく。
 g)多元的焦点化:同じ出来事に対し複数の人物が焦点人物となる。 推理小説や裁判の場面で使われる。
ロ)本作では(「語り手」の項目とあわせ)
 a)例1:儀琳の救難・座闘の報告場面
 ・語り手:起きた事件の内容=一人称・儀琳。 儀林の話を聞く周りの情況=三人称・作者。
 ・信頼できない語り手:儀琳は「純粋で素直な尼」と信頼しうるが、定逸師太に余計なこと言うなと釘を刺されたこと、令狐冲に惚れてしまったらしいという点で「信頼できない」部分あり。
 ・焦点人物:儀琳の語り部分=儀琳。 この場面自体=林平之が「聆祕」・覗き見している。 見逃し・聞き逃しがあるかもしれない。
 ・林平之も含め、全員物語世界の中にいる=内的焦点化。 焦点人物が儀琳・林平之と刻々変わっていく=不定内的焦点化。
 ・効果:儀琳をはじめ参加者のキャラクタが顕在化する。 読者が林平之とだんだん同一化し、その場にいるように感じる。
 b)例2:少林寺における正派連合対任我行Gの三戦
 ・語り手:三人称・作者。信頼できない語り手は「見かけ上」いない。
 ・焦点人物:天井裏に隠れている令狐冲がほとんど。 しかし、対戦のシーンでは各人へ瞬間的に変わっていく=固定に近い不定内的焦点化
 ・効果:焦点人物である令狐冲に読者が同一化し、任我行の「令狐冲、降りて来い!」がまるで読者自身が言われたように感ずる。 更に岳不群との対決では読者が令狐冲になりきってしまう。
 c)多元的焦点化の顕著な例は無い


5)提示と叙述
イ)言葉の定義
 a)提示:語り手が介入して説明したりせず、黙ってあるがまま示すこと。 会話の内容や客観描写のみ。
 b)叙述:語り手が前面に出てきて、出来事や情況、人物の言動や心理、動機などについて、読者に対して解説すること。
ロ)本作では
 a)提示だけ叙述だけの小説はありえないが、ほぼ全編で「叙述」形式である。 カッコつきの「説明調」の部分で、「いわれなくても解る」所多し。 展開が鋭くなるので説明的部分を削ったほうがいいところがある。
 b)提示も叙述もせず状況証拠でストーリーを語る場合あり。 岳不群がどの時点で自宮したのか、定逸・定間師太の殺害についてなど具体的描写が無い。


はい、ここで一休み、続きは二時限目で・・・。
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