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 原作もドラマももう最終巻に入ってきました。 この辺まで来るともう作者も読者も「ヘトヘト」で、お話の締めくくりもいい加減なもんです。 この小説のシメは、小宝の「俺の父ちゃんは誰なの?」に対する春花ママのいう最後の一言なんですが・・・ね。
鹿鼎記 8 栄光の彼方鹿鼎記 8 栄光の彼方
(2004/03/19)
金庸

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 さて、鹿鼎記金庸中文wiki)最後の武侠小説ですが、では韋小宝は、金庸小説の到達点なのか? ということで、金庸小説における主人公(男主角)の系譜を、「情義」「侠」「官と士と野」という点から観ていきます。 多分数回にわたるとおもいます。

 武侠小説は、金庸曰くの「人情」と「情義」を描くべく、現実社会のメタファー(隠喩)として、江湖という「ヨコ」軸、武林という「タテ」軸の「仮想空間」を舞台とします。 武侠小説の魅力は、この、元来「リアリティ」の無い理想郷のような仮想空間で、滅茶苦茶に「リアリティ」のある「権力闘争」「愛憎恩仇」「世間の柵」を展開する、出来るところにあります。 理想郷で人情話をしてもしょうがないので、面白さは「ドロドロ」に限りますが・・・これは好みですね。
 金庸の結果的な凄さは、更にそこに「諷刺としての政治批評」「近代人の人間批評」」を現実の仮託として持ち込んだことにあると想う、と以前書きました。

 さて、この「江湖」「武林」は、現実世界では本来「野」、つまり「官」でも「士」でもない世界なのですが、仮想空間では、「門派(主流・反主流、当主から底辺まで)」「武術の達人(になるべく努力している人も)」というガチガチの「官」「士」を造り上げているわけです。 武侠小説で描かれる人物は、「「侠」という「観点」「価値観」」を軸にしています。 「情義の具現者」として描かれる「侠」ですが、陳舜臣さん云うように、実は「官」「士」ではなく「野」にあってこその「侠」のはずが、武侠小説では「官」(門派の首領)や「士」(武術の達人)という「カッコイイ」「英雄」として登場する、か、なってしまっても良い、という「逆さま」の世界が展開されます。
  それ故、史実では「反逆者で無法者の悪人」が、小説では「義侠心溢れる情の深い英雄」に「ひっくり返る」「返せる」、わけです。 真逆に「歴史的には功績者」が、実は「卑劣で血も涙も無い小物」にも出来るわけです。 魯迅が指摘した不可思議さを孕みながら、永い期間に渡り、「民」の喜ぶ世界を書き残してきたという意味での『「野」の「娯楽文化」の「商品」』として、武侠小説が生きながらえてきたのは、この構造故でしょう。
 これが方法論として成り立ってきたのは、「神」という絶対者が存在しない、「天下」は誰のものでもあり一人のもの、太極・陰陽のように「二元論」でありつつ常に変わるものという・・・という中華文化によるものでしょう。 これは「正邪善悪」「愛憎恩仇」という武侠小説の本質とも絡むので、後々・・・。
 この辺は所謂「歴史小説」になれた日本人には「そんな筈無いだろ」と「馴染まない」部分かもしれません。 唯の作り話の「時代小説」に対応する娯楽の分野だよ・・・と。 前回、陳舜臣さんに「武侠小説」を書いて欲しいと書きましたが、かの名作「耶律楚材」なんて武侠ならぬ「文」侠小説だと想います。 流行の歴史家がヘンにメクジラを立てるのはこの辺かな・・・と。 閑話休題。

 さて、この武侠小説故の「主人公」の二重構造に戸惑ったのか、それとも挑戦したのか・・・。 「文弱」の極み、それ以前に『「情義」が第一というが、「人」って弱いモンダよ』という「本当に言いたいこと」をストレートに書いてしまい、世の主に婦女子の顰蹙をかったのが、金庸の処女作「書劍恩仇録」「陳家洛」です。 紆余曲折あるものの、勧善懲悪・邪凶正吉・因果応報で、最後は「生死はともあれ、カッコよく終わる」筈が・・・ご承知の通り。
書剣恩仇録〈1〉秘密結社 紅花会書剣恩仇録〈1〉秘密結社 紅花会
(1996/10)
金 庸

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 この名家の御曹司で門派の継承者という、現実的にも、仮想空間でも、ともに徹底的に「士」の陳家洛は、故の「弱さ」をもろに露呈して情けなく主舞台から去ることになります。 評判の悪い「陳家洛」ですが、これを出発点として、旧来のパタンに逃げることなく、「モダンな武侠主人公(いい表現が見つからない(笑)」を求めて、長短十二の物語を書くことになったようです。

 ただ、明末を当時の政情のメタファーとし、自伝的要素を加えた碧血劍袁承志や、
碧血剣〈1〉復讐の金蛇剣碧血剣〈1〉復讐の金蛇剣
(1997/04)
金 庸岡崎 由美

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 小説の書き方の練習をした「雪山飛狐」及び、「飛狐外傳」「胡斐」では、まだその取り組みはあまり視えません。
雪山飛狐雪山飛狐
(1999/02)
金 庸岡崎 由美

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飛狐外伝〈1〉風雨追跡行飛狐外伝〈1〉風雨追跡行
(2001/09)
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 それは、やはり「射雕英雄伝」「郭靖」「楊康」の対比から始まります。
 というわけで、詳細とこれに続く各主人公のお話は次回で・・・。
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