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 そして、金庸がもっと「人間のドラマ」を書いてみたい・・・と宣言して取り組んだのが続く「天龍八部」のようです。 天龍八部では、この四人(蕭峯(喬峯) 段誉 虚竹 慕容復)の主人公を軸に、「普通の人が現実世界でふりかかるアレやこれやを、奇怪な登場人物たちに仮託した」のです。 
 
天龍八部〈第1巻〉剣仙伝説天龍八部〈第1巻〉剣仙伝説
(2002/03)
金 庸岡崎 由美

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 次の長編、「政治的=社会的人間の在り様」をやはり仮想空間で展開した「笑傲江湖」については散々書きました
 この笑傲江湖令狐冲は、有象無象の人間達に翻弄されつつも「自分」を何とか貫きたいという「モダン」な武侠主人公です。 私は、彼の生き様を借りて、「近代中国の苦悩、在り様を模索する」という金庸の思索が仮託されてしまっている、という読み方をしてしまいました。
秘曲 笑傲江湖〈第1巻〉殺戮の序曲秘曲 笑傲江湖〈第1巻〉殺戮の序曲
(1998/04)
金 庸岡崎 由美

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 この二作は、「ブンガク」が『人間のドラマを描き込むこと』、という一点で定義できるとすれば、「武侠小説」という形式・文法を借りた、「ブンガク」作品といえると思っています。
 
 さて、韋小宝につながる主人公ということでは、中篇になるでしょうが、天龍と笑傲の間に書かれた、「侠客行」の「狗雑種」=石破天、が登場します。
侠客行〈第1巻〉野良犬侠客行〈第1巻〉野良犬
(1997/10)
金 庸岡崎 由美

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 彼には「文字が読めない」「名前もない」という「特異」・「虚をついた」特徴を与え、さらに無垢な性格とこれまで散々書いてきた「巻き込まれ形」物語り展開をしました。 彼を取り巻く人物や門派も徹底した「対比」形で、それはまあ徹底しています。 前半の急展開、少々のお色気、そして最後の謎解き的展開と、武侠小説のモデルともいえる隠れた(笑)傑作です。 挑発するように、「張三李四」なんて「名無しの権兵衛」さん=『何処にでも居るが何処にも居ない人物』まで登場させています。
 この狗雑種の、「文字が読めない」「名前もない」という処に、「普通の人」の「極み」を表現したのです。 彼は、小説はもとより全ての「書かれたもの」と無縁の人物です。 自分の事を「書き残す」こともしませんし、もし、自分の事を書かれても読むことが出来ません。 ここに所謂「野」の局地を設定したのだと想います。
 その文字通り「無名」たる人物が、本当は彼にとって無縁の人々とのやりとりで、彼なりの「情義」を自然に体現していく、というのがこの物語の一つの流れです。 現実的にも仮想空間においても「官でも士でもない」狗雑種こそ、武侠小説という形式で書ける「野における侠」のモデルです。

 唯、彼は「モデル」であり、読者にとっては「登場人物・読む対象・第三者」です。 そして最後、金庸は、読者自身(ありとあらゆる普通の人)を小説の世界へ「引っ張り込む」形で「韋小宝」を書いたのです。
 その辺は、次回(この編の最終回)で・・・。
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