漠々糊々

千言和萬語,隨浮雲掠過

本の紹介 『故事成語でわかる経済学のキーワード 』 温故知新〜漱石枕流 

 
故事成語でわかる経済学のキーワード (中公新書)故事成語でわかる経済学のキーワード (中公新書)
(2006/11)
梶井 厚志

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 この本の著者は、笑傲江湖のこの記事で使わさせていただいた本の著者です。 よく「三国志に学ぶ人心掌握術」とか、「孫子兵法に隠された経営の極意」とか「水滸伝に学ぶ裏社会の全て」(こんなの無いか(笑))、とか、中華歴史モノと処世術を繋げた本が多々出ておりますが、これは趣が異なります。
 先ず前書き自体に「温故知新」という項目名をあてています。 そこで著者は、
 私がこの本で試みたいのは、ともすれば難解であると敬遠されがちな経済学的な考え方と経済学のキーワードを、故事成語を用いて格調高くしかも心に残るように解説することである。
 では、どの様な故事成語と経済学用語を結び付けているか、続きに、取り上げられている、故事成語と、経済学用語の28例(目次の抜粋)を載せます。
 最初は「読んで字の如く」の解説。 続いて、やや専門的な、それも経営学・戦略論に近い用語と続きます。 『完璧』から「統計学」の『第一種過誤と第二種過誤』を持ってくるのは、学者さんですね・・・という感じ。
 後半は、著者があとがきの題名にしているように、やや「漱石枕流」的な部分もありますが、一方、「虎穴に入らずんば・・・」では、一般的な「ノーリスク・ノーリターン」ではなく、
 1)圧倒的な匈奴を討ってこそ、鄯善王をこちら側に付けられる、という戦略的読み
 2)不意打ちを、班超軍の戦力(匈奴に比べ圧倒的に弱い)を知られる前に行うことの情報戦略的意味合い
 3)班超が、急襲に際し、部下の忠誠を念入りに確認していることで、「情報連鎖」へ対応している
 これらに、眼を向けているところは流石です。

 というわけで、中華故事成語と経済学的用語に興味のある方はお勧めです。 『矛盾』って結局、『トレード・オフ』ってことなのよ・・・なんて薀蓄ネタには最適です。

言葉をクリックすると簡単な解説HPへリンクします。 尚、「−関連・・・」は、小生が本編から抽出した言葉です。
 まえがき・・・・『温故知新
 1. 『覆水盆に返らず』・・・・『サンク・コスト
 2. 『蛇足』・・・・『追加的利害』−関連(コスト・パフォーマンス)(費用便益分析
 3. 『矛盾』・・・・『トレード・オフ
 4. 『他山の石』・・・・『分業と専門の経済効果』−関連(比較優位
 5. 『洛陽の紙価を貴む』・・・・『価格理論』−関連(需要と供給)(価値
 6. 『先ず隗より始めよ』・・・・『ケインズ乗数効果
 7. 『青は藍より出でて藍より青し』・・・・『インセンティブ
 8. 『鶏鳴狗盗』・・・・『リスクからの収益をどう考えるか』−関連(投資
 9. 『漁夫の利』・・・・『先読み』−関連(ゲーム理論
 10.『伯牙絶弦』・・・・『コミットメント
 11.『画龍点晴を欠く』・・・・『ホールドアップ
 12.『臥薪嘗胆』・・・・『シグナリング
 13.『杞憂』・・・・『『リスクに備える』−関連(期待効用理論)(不確実性
 14.『朝三暮四』・・・・『フレーミング効果
 15.『完璧』・・・・『データの経済学的解釈』−関連(統計学)(第一種過誤と第二種過誤
 16.『刎頚の交わり』・・・・『第三者効果』−ここではマス・メディア論より広義に使っている。
 17.『桃李いわざれども下自ずら蹊を成す』・・・・『ロック・イン』−関連(スイッチング・コスト
 18.『奇貨居くべし』・・・・『掘り出し物を生かす工夫』−関連(QDOS
 19.『傍若無人』・・・・『外部効果
 20.『国士無双』(これではない)・・・・『能力と努力』−関連(エイジェンシー問題)(スクリーニング
 21.『愚公山を移す』・・・・『地道な努力が出来ないのはなぜか』−関連(合理的目標)(成果主義
 22.『助長』・・・・『余計なことをしてしまうのはなぜ』
 23.『敗軍の将兵を語らず』・・・・『結果論はなぜいけないの』−関連(失敗学
 24.『四面楚歌』・・・・『情報操作』ー関連(意思決定理論)(情報の非対称性
 25.『苦肉の計』(三国志・苦肉の策)・・・・『偽りの情報を活用する』
 26.『虎穴に入らずんば虎子を得ず』・・・・『情報の連鎖効果』−関連(取り付け騒ぎ
 27.『三顧の礼』・・・・『長期的関係インセンティブ
 28.『泣いて馬謖を斬る』・・・・『疑わしきは罰すべきか』
 あとがき・・・・『漱石枕流
[ 2009/11/23 17:00 ] | TB(0) | CM(2)
コメントありがとう御座います。
>取り越し苦労ではないような気がするんですね。
 経済学用語でも、「リスク」と「不確実性」は、かたや「計測・予測可能」、「不可能」と少々異なります。 これによって、「合理的判断」か「心理的要素」どちらが重要か、変わってきます。
 「杞憂」」も単なる「リスク」とみれば、「そんな事ないだろ」ですが、「不確実性」とみれば、「当事者の心理」が有意になってくるのです。
 普通使っている「杞憂に終わる」というような言い方でも、「心理面が重要」と思えますので、ご指摘の点は将にその通り、かもしれませんね。
[ 2009/11/24 19:25 ] [ 編集 ]
面白そうな本ですね。
ところで、「杞憂」については、実際の意味するところは
普段使われている意味とは若干違うのではと最近思っています。「杞」の国というのは、「殷」の国が滅びたあと、「周」が殷の民を封じた国なわけです。いわば、一度自分のよりどころが滅びるという憂き目にあっている民。その者が心配する天が崩れるのではないか、というのは、取り越し苦労ではないような気がするんですね。この出典の「列子」というのも、ちょっと謎をはらんでいますし。なかなか深く考えていくと面白いです。
[ 2009/11/24 00:14 ] [ 編集 ]
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年齢:「天命」を知る「はず」の歳を超えました。
ブログ名:「漠々糊々」は司馬遼太郎の「街道を行く・びんの道」の一節からいただきました。 「行動しなくてはいけない時に、惰眠を貪ること」の意。 
副題「千言和萬語,隨浮雲掠過」はテレサ・テン、フェイ・ウォンの名曲「千言萬語」の一節。 グタグタ沢山モノを云っているが、何の意味もないよ・・・ってことです。

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