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 『倚天屠龍記』の悪女列伝。 今回は蛛児(阿離・殷離)」(リンクWiki)(リンク百度です。
 今回はドラマでこの数回「ウザイ」演技(女優さんは中々がんばっていたと思いますが、脚本・演出全くダメ)がをみせてましたが、もう出自・経歴もネタバレになりました。

 彼女の人物設定は、手が込んでいて上手い、面白いキャラクタだと思っています。
 「蛛児(阿離・殷離)」は、明教から分裂した天鷹教・教主「殷天正」の息子「殷野王」の正妻の娘です。 つまり、「張無忌」とは従姉弟になります。
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 まあ、これまでの彼女の人生は凄まじい。 小説第16章から、蛛児の科白抜書きです(斜字)

 「名字はないの」
 「父さんはあたいを憎んでるから、見つかったら殺されるわ。 父さんの名字を名乗れないでしょ? 母さんはあたいが殺したんだから、母さんの名字も名乗れない。 こんなに醜いんだから、醜娘とでも呼んでくれたらいいわ」
 「・・・あたいを生んだ母さんは父さんの本妻なんだけど、男の子が生まれないんで、妾をめとったの。 そしたら兄さん二人が生まれたんで、妾ばかりかわいがってた。 母さんはそのあとあたいを生んだけど、あいにくまた女だったというわけ。 妾は父さんにかわいがられてるもんだから、あたいも母さんも、ずっといじめられてた。 兄さんたちもひどくて、一緒になって母さんをいじめてたから、母さんはいつもこっそり泣いていたわ。 ねえ、どうしたと思う。」
 「でも父さんも妾の味方をしていたの。 あたい、我慢できなくって、妾をバッサリやっちゃったんだ」
 「母さんはあたいが騒ぎをおこしたので、あたいを連れて逃げたの。 でも兄さんたちが追ってきて、あたいをつかまえようとしたんだ。 母さんも防ぎきれなくなって、あたいを逃すために首を吊って死んだの。 わかったでしょ、母さんはあたいが殺したことになるし、父さんがあたいを殺そうとしているわけが」


 父殺し・母殺し(コンプレックス)の物語、強烈な「エピソード記憶です。
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 道行の途中で、蛛児は蜘蛛の毒を取り込む修行を続けていて、その度に顔の浮腫が増え醜くなります。 この武功が「千蛛万毒手」です。 (ドラマでは急に浮腫がなくなりましたが、では最後どうするんでしょう?(笑))
 さておき、小説から科白引用を続けます。

 「・・・かあさんはね、あたいに「千蛛万毒手」を教えてくれたの。 それにちなんでこの名前をつけたのよ。」
 「千蛛万毒の毒を練るとね、二十匹あたりでもう、体内に毒がたまって、顔が変形し始まるの、千匹も使うころには、このうえなく醜い顔になってしまうんだ。・・・・母さんは、醜くなって父さんに嫌われるのを恐れ、涙を呑んで畢生の技を諦め、鶏も絞め殺す力もない平凡な女になってしまったの。・・・・そして母さんは、妾とその子供に虐められても、刃向かうことすらできなかった。 そして結局自らの命を絶ってしまったんだわ・・・」
 「武功は無数にあるでしょうけど、この千蛛万毒に対抗し得る門派があると思う?・・・・あたいの技が完成したら、あんたなんかこの指ひとつでお陀仏よ」


 金庸の小説では『神雕侠侶』の「情花の毒」で書かれていたように、「毒」は「情」のメタファーです。
 ここでも、「母を殺し」「父に殺され」てしまうことによりその「情」を失った蛛児が、母自身は全否定しつつも彼女に残した唯一のもの「千蛛万毒」の修行により、得られなかった「毒」(情ですね)をなんとか得て、「武林一の武功」=「世界一の幸せもの」になりたい。 そういう彼女の「生き様」が読み取れます。 また、蛛児が外見の「美」を失っても「毒」を得ようとするのは、外面の「美しさ」を得る為、内面の「情」=毒を捨てたものの、結果全てを失った母を否定することでもあります。
 武侠小説ですから「千蛛万毒手」がメタファーですが、学園小説なら母の残した「チェロ」と思い出の「ブラームスの曲」にでもなるのでしょう。

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 その彼女が「夢想」する「追憶」の「情」の対象が、胡蝶谷での張無忌です。 それもわざわざ「噛まれて」います。 修行では「毒蜘蛛」に噛まれる・・・、「千蛛万毒」は、「虐めに負けない強い(くあって欲しかった)母の情」であり、彼女が山中を探し回る修行用の「毒蜘蛛」は、所詮手に入れることの出来ない「張無忌」の代替でもあるんですね。

 張無忌は自らの名前を隠し「曾阿牛」と名乗りますが、蛛児は「張無忌」の追憶を「曾阿牛」に感じてしまいます。 朱九真の犬に阿牛が「噛まれた」故、朱九真を「殺して」しまったり、阿牛に「言い逃れ」とはいえ「一緒にいてくれ」と云わせようとしたり・・・。 「夢想」と「現実」の境界領域にしばしば入り込んでしまいます。
 そして、明教と六大門派の戦いに巻き込まれる中で、実は張無忌を追いかけてここまで来たことを語ります。

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 「無忌が死んだ・・・」と「無忌の母は叔母」と聴かされた時の、彼女の表情と演技は、「努力賞」ですね。 実の父と再会では、あいかわらずタメ口きいていますが、「父に殺される」ほどまでは関係はこじれてはいないようです(笑)。

 さて、ここからどうなる「蛛児」さん・・・ですが、次の登場は暫く後になります。

 これまでの「倚天屠龍記」で「蛛児(阿離・殷離)」を演じてきた皆さんです。
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 今回演ずるは「張檬」さん。 何処かでみたと思ったら、日中合作ドラマ「蒼穹の昴」で「珍妃」役でした。 珍妃は、マザコン皇帝光緒帝が最も寵愛、「」を注いだといわれますが、西太后との関係などみると、光緒帝にとってはホンモノの「」だったかもしれません。

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